病気で働けなくなったら生活費はどうする?傷病手当金と貯蓄の基本

病気やけがで働けなくなったときは、医療費だけでなく、生活費の準備も大切です。

医療費には高額療養費制度があります。

そのため、医療機関や薬局で支払う医療費には、一定の上限があります。

ただし、生活費まで自動的に補われるわけではありません。

家賃や住宅ローン。
食費。
水道光熱費。
教育費。
通信費。
保険料。
社会保険料や税金。

これらは、休職中でも続くことがあります。

会社員の場合は、条件を満たせば傷病手当金を受け取れる可能性があります。

ただし、傷病手当金だけで、普段どおりの生活費をすべてまかなえるとは限りません。

個人事業主や経営者の場合は、会社員とは備え方が変わります。

この記事では、病気で働けなくなったときの生活費をどう考えるか、傷病手当金と貯蓄の基本をわかりやすく整理します。

病気で働けなくなったら生活費はどうするのか

病気で働けなくなったときに、まず確認したいのは次の3つです。

・医療費はいくらかかるか
・収入はいくら減るか
・生活費はいくら必要か

医療費だけを見ると、高額療養費制度によって自己負担には一定の上限があります。

しかし、働けない期間が長くなると、家計で問題になりやすいのは生活費です。

たとえば、入院や自宅療養で仕事を休むと、給与が減ることがあります。

勤務先によっては、有給休暇、病気休暇、休職制度が使えることもあります。

その後、条件を満たせば傷病手当金の対象になることがあります。

ただし、手取り収入が今までと同じになるわけではありません。

そのため、病気で働けなくなったときのお金は、医療費と生活費を分けて考えることが大切です。

まず分けて考えたいのは「医療費」と「生活費」

病気への備えというと、入院費や手術費を思い浮かべる人が多いです。

もちろん医療費の確認は大切です。

ただし、家計への影響を考えるときは、医療費と生活費を分けて見る必要があります。

高額療養費制度で医療費には上限がある

公的医療保険には、高額療養費制度があります。

これは、医療機関や薬局の窓口で支払った医療費が、月ごとの上限額を超えた場合に、超えた分が支給される制度です。

上限額は、年齢や所得によって変わります。

そのため、医療費が高額になっても、自己負担が際限なく増えるわけではありません。

ただし、上限額は人によって異なります。

会社員、個人事業主、扶養の有無、所得区分によって確認先も変わります。

まずは、自分が加入している健康保険で確認することが大切です。

生活費や収入減は別に備える必要がある

高額療養費制度があるからといって、病気で働けない期間の生活費まで補われるわけではありません。

たとえば、次のような費用は毎月続きます。

・住宅ローン
・家賃
・食費
・水道光熱費
・通信費
・教育費
・保険料
・車関係の費用
・親への支援
・事業関係の固定費

さらに、入院や通院では医療費以外の支出もあります。

・差額ベッド代
・入院中の食事代
・通院交通費
・家族の付き添い交通費
・日用品
・家事代行や宅配の利用
・仕事復帰までの準備費用

医療費への備えだけでは足りないことがあります。

病気で働けないときは、「治療にかかるお金」と「暮らしを続けるお金」を分けて考えることが大切です。

会社員は傷病手当金を確認する

会社員が業務外の病気やけがで働けなくなった場合、健康保険の傷病手当金を受け取れることがあります。

これは、給与が出ない、または給与が少ない期間の生活を支えるための制度です。

傷病手当金は働けない期間の収入を補う制度

傷病手当金は、主に次のような条件を満たす場合に対象になります。

・業務外の病気やけがで療養している
・仕事に就くことができない
・連続する3日間を含み、4日以上仕事を休んでいる
・休んだ期間に給与の支払いがない、または少ない

ここで大切なのは、仕事が原因の病気やけがとは分けて考えることです。

仕事中や通勤中のけがなどは、労災保険の対象になる場合があります。

傷病手当金は、主に業務外の病気やけがを前提にした健康保険の制度です。

おおよその金額は給与の3分の2を目安に考える

傷病手当金の金額は、ざっくりいうと給与の3分の2程度を目安に考えます。

正確には、支給開始日以前の一定期間の標準報酬月額をもとに計算します。

標準報酬月額とは、社会保険料などを計算するときに使う給与の区分です。

普段の手取り額そのものではありません。

そのため、「給与の3分の2くらい」と聞いても、実際の家計では注意が必要です。

たとえば、額面月収36万円の人がいるとします。

かなり大まかに考えると、3分の2は24万円です。

普段の手取りが28万円前後だった場合、傷病手当金だけでは毎月4万円ほど少なくなるイメージです。

さらに、休職中も社会保険料や住民税の支払いが続くことがあります。

そのため、「傷病手当金があるから生活費は問題ない」とは言い切れません。

支給期間は通算1年6か月が上限

傷病手当金の支給期間は、同じ病気やけがについて、支給を開始した日から通算して1年6か月が上限です。

現在は、実際に支給された期間を通算して見る仕組みです。

たとえば、治療しながら一度復職し、その後また同じ病気で休むようなケースでは、支給された期間を通算して考えます。

ただし、いつからいつまで対象になるかは、病状や勤務状況、健康保険の判断によって変わります。

勤務先や加入している健康保険に確認することが大切です。

傷病手当金だけで生活できるとは限らない

傷病手当金は大切な制度です。

しかし、傷病手当金だけで普段どおりの生活を続けられるとは限りません。

理由は、収入が減っても支出が同じように残ることが多いからです。

社会保険料や住民税の支払いが残ることがある

休職中でも、健康保険料や厚生年金保険料などの社会保険料がかかることがあります。

また、住民税は前年の所得をもとに計算されます。

そのため、今年の収入が下がっても、住民税の支払いがすぐに減るとは限りません。

傷病手当金は給与とは違う扱いです。

ただし、家計としては、毎月の支払いが続く点を見落としやすいです。

病気で働けない期間を考えるときは、入ってくるお金だけでなく、出ていくお金も確認する必要があります。

住宅ローンや家賃は変わらない

病気で休職しても、住宅ローンや家賃は基本的に変わりません。

たとえば、毎月の住宅費が15万円ある家庭で、収入が月5万円減るとします。

この場合、住宅費の負担感は大きくなります。

医療費そのものよりも、固定費が家計を圧迫することがあります。

住宅ローンがある場合は、団体信用生命保険の保障内容も確認しておくと整理しやすくなります。

ただし、団体信用生命保険は、病気で一定期間働けないだけで必ず使えるものではありません。

保障内容は契約によって異なります。

教育費や固定費も続く

30〜50代では、子どもの教育費がかかる家庭もあります。

学費、塾代、習い事、通信費、保険料などは、すぐに減らしにくい支出です。

共働き世帯では、片方が働けなくなると、もう片方の収入だけで家計を支える必要があります。

普段は問題なく回っている家計でも、収入が一時的に減ると、貯蓄の取り崩しが必要になることがあります。

だからこそ、病気への備えは、医療費だけでなく生活費まで含めて考える必要があります。

個人事業主・経営者は会社員より収入減に注意

個人事業主や経営者は、会社員よりも収入減への備えが重要になることがあります。

理由は、会社員と同じ制度が使えない場合があるからです。

個人事業主には傷病手当金がない場合が多い

個人事業主が市区町村の国民健康保険に加入している場合、会社員の健康保険にあるような傷病手当金がないことが多いです。

そのため、病気で働けない期間が、そのまま収入減につながる可能性があります。

もちろん、加入している保険や組合によって扱いが異なる場合があります。

しかし、会社員と同じように「休めば傷病手当金がある」と考えるのは注意が必要です。

個人事業主の場合は、次のような備えを厚めに見ておきたいところです。

・生活費の予備資金
・事業の固定費
・税金や社会保険料
・外注費や代替対応の費用
・売上が戻るまでの期間

働けない期間だけでなく、仕事に復帰してから売上が戻るまでの時間も考える必要があります。

経営者は役員報酬や事業資金も分けて考える

経営者の場合は、個人の生活費と会社の資金を分けて考える必要があります。

たとえば、次のような点です。

・役員報酬をどうするか
・会社の固定費をどう払うか
・従業員の給与をどう守るか
・借入返済は続くか
・自分が不在でも事業が回るか
・個人の生活費をどこから出すか

経営者は、自分の体調不良が個人の家計だけでなく、事業にも影響します。

そのため、会社員以上に、生活資金と事業資金を分けて見ておくことが大切です。

生活費の備えはいくら必要か

病気で働けなくなったときの備えは、人によって必要額が変わります。

ただし、考える順番は共通しています。

まずは、毎月の生活費を把握することです。

まずは生活費3か月分を確認する

最初の目安として、生活費3か月分を確認してみると分かりやすいです。

たとえば、毎月の生活費が35万円の家庭であれば、3か月分は105万円です。

35万円 × 3か月 = 105万円

この金額がすぐ使える預金としてあるかを確認します。

生活費3か月分があると、短期間の入院や休職、収入のズレに対応しやすくなります。

ただし、これは最低限の目安です。

住宅ローンがある家庭、教育費が重い家庭、個人事業主、経営者の場合は、さらに厚めに考えたいところです。

できれば6か月分から1年分も目安になる

病気やけがによる休職が長引く場合は、生活費6か月分から1年分を目安に考えることもあります。

たとえば、毎月の生活費が35万円の場合です。

6か月分:210万円
1年分:420万円

会社員で傷病手当金がある場合でも、毎月の不足額が出ることがあります。

たとえば、普段の手取りが30万円で、傷病手当金などによる収入が22万円程度になった場合、毎月8万円の不足です。

8万円 × 12か月 = 96万円

この場合、1年間で約96万円を貯蓄から補う可能性があります。

実際には、医療費や交通費、家族の支出も加わることがあります。

そのため、生活費そのものに加えて、医療関連の支出も見ておく必要があります。

家族構成や働き方で必要額は変わる

必要な貯蓄額は、家族構成や働き方によって変わります。

たとえば、次のような違いがあります。

・単身か夫婦か
・共働きか片働きか
・子どもがいるか
・住宅ローンがあるか
・親への支援があるか
・個人事業主か会社員か
・貯蓄以外に使える資産があるか

同じ年収でも、毎月の固定費が高い家庭と低い家庭では、必要な備えが違います。

病気への備えは、収入の多さだけでなく、毎月必ず出ていくお金を基準に考えることが大切です。

保険は不足分を補うものとして考える

病気への備えを考えるとき、医療保険や就業不能保険が気になる人も多いです。

ただし、保険は「入るか入らないか」だけで考えるよりも、不足分を補うものとして整理した方が分かりやすいです。

医療保険は治療費だけでなく周辺費用も見る

医療保険は、入院や手術などに備えるための保険です。

ただし、公的医療保険や高額療養費制度があるため、医療費の自己負担には一定の上限があります。

一方で、差額ベッド代、交通費、日用品、家族の付き添い費用などは別に考える必要があります。

医療保険を見るときは、治療費だけでなく、こうした周辺費用も含めて考えると整理しやすくなります。

就業不能への備えは生活費ベースで考える

病気で働けない期間が長くなると、医療費よりも生活費の不足が問題になることがあります。

そのため、就業不能への備えは、毎月の生活費を基準に考えます。

たとえば、毎月の生活費が35万円で、働けない期間の収入が22万円になる場合、毎月13万円不足します。

この不足分を、貯蓄で補うのか、保険で補うのかを考えます。

保険を検討する場合も、まずは不足額を把握することが大切です。

保険に入りすぎない視点も大切

病気への備えは大切です。

しかし、心配だからといって保険を増やしすぎると、毎月の保険料が家計を圧迫することがあります。

保険料は、病気にならなかった場合でも毎月支払います。

そのため、貯蓄で対応できる部分と、保険で補う部分を分けて考える必要があります。

たとえば、短期間の入院費用は貯蓄で対応し、長期間働けない場合の生活費だけ保険で補う、という考え方もあります。

どの方法が合うかは、家計や働き方によって変わります。

働き方別に整理したいポイント

病気で働けなくなったときのお金は、働き方によって見え方が変わります。

会社員、共働き世帯、個人事業主、経営者では、使える制度や必要な備えが違います。

共働きは片方の収入が止まった場合を確認する

共働き世帯では、夫婦どちらかが働けなくなった場合を考えます。

確認したいのは、次の点です。

・片方の収入だけで生活費を払えるか
・住宅ローンや家賃を払えるか
・教育費を継続できるか
・貯蓄を毎月いくら取り崩すか
・もう一方の働き方に影響が出るか

共働きの場合、普段は家計に余裕があっても、片方の収入が止まると急にバランスが変わることがあります。

特に住宅費や教育費が大きい家庭では、早めに確認しておきたいところです。

住宅ローン・家賃・教育費を先に見る

病気で働けないときは、固定費が家計に大きく影響します。

まず見るべき固定費は、次の3つです。

・住宅ローンまたは家賃
・教育費
・保険料や通信費などの毎月支出

この3つを確認すると、毎月最低限必要なお金が見えてきます。

たとえば、住宅費15万円、教育費8万円、その他固定費10万円なら、それだけで33万円です。

ここに食費や医療費が加わります。

働けない期間の備えは、年収ではなく、毎月必ず必要な支出から考える方が現実的です。

仕事復帰までの期間を想定する

病気やけがの内容によって、仕事に戻るまでの期間は変わります。

数週間で戻れる場合もあります。

数か月かかる場合もあります。

治療しながら短時間勤務で復帰する場合もあります。

そのため、生活費の備えは、次のように期間で分けて考えると整理しやすくなります。

・1か月休んだ場合
・3か月休んだ場合
・6か月休んだ場合
・1年休んだ場合

期間ごとに、収入と支出を並べると、不足額が見えやすくなります。

まとめ

病気で働けなくなったときは、医療費だけでなく生活費も考える必要があります。

会社員の場合は、条件を満たせば傷病手当金を受け取れることがあります。

ただし、傷病手当金だけで普段どおりの生活費をすべてまかなえるとは限りません。

ポイントは次の通りです。

・医療費と生活費は分けて考える
・高額療養費制度で医療費には一定の上限がある
・生活費や収入減は別に備える必要がある
・会社員は傷病手当金を確認する
・傷病手当金はおおよそ給与の3分の2を目安に考える
・支給期間は同じ病気やけがについて通算1年6か月が上限
・個人事業主や経営者は収入減への備えを厚めに考える
・貯蓄は生活費3か月分、できれば6か月分から1年分も目安になる
・保険は不足分を補うものとして考える

病気への備えは、保険だけで決まるものではありません。

公的制度、勤務先の制度、貯蓄、家計の固定費を合わせて見ることで、必要な準備が分かりやすくなります。

自分の場合に置き換えて考える視点

病気で働けなくなったときのお金は、次の順番で整理すると分かりやすくなります。

  1. 自分は会社員か、個人事業主か、経営者か
  2. 傷病手当金の対象になる可能性があるか
  3. 休職中に勤務先から給与や手当が出るか
  4. 毎月の生活費はいくらか
  5. 住宅ローンや家賃はいくらか
  6. 教育費や親への支援はあるか
  7. 生活費3か月分、6か月分、1年分の貯蓄はあるか
  8. 不足する部分を貯蓄で補うか、保険で補うか

同じ病気で働けない期間でも、会社員、共働き、個人事業主、経営者では見え方が変わります。

また、住宅ローンがあるか、子どもの教育費があるか、親の介護費用があるかによっても、必要な備えは変わります。

制度や数字は同じでも、家族構成や働き方、資産状況によって見え方は変わります。自分の場合に置き換えて整理すると、判断しやすくなる分野です。

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